私はカメラを持って、京都に行くのが好きです。京都といえばお寺や神社、歴史的スポットが多いので、撮影したい場所がたくさんあります。
そんな中で、今回は美術館での撮影をご紹介したいと思います。「日本の美術館って撮影できたっけ?」と思われるかもしれません。できるところがあるんです。
「京都府立陶板名画の庭」をご存知でしょうか?
なんと屋外の美術館です。正確に言うと、世界で初めての絵画庭園のようです。
ちょうど曇りの日だったので、絵画に余分な光が入らず、ある意味良かったかもしれないと思いました。
京都府立陶板名画の庭に到着した
京都駅から地下鉄烏丸線北山駅から徒歩1分というアクセスの良さは魅力です。
出口を出れば、すぐに見える場所にあります。
美術館というと写真撮影NGのイメージがあるのですが、こちらはOK!
カメラ&美術好きにはとてもうれしいことです。
さて、撮影に使った機材はCanon EOS M10(ミラーレス一眼)。標準レンズで撮影しました。有名な建築家によって設計された屋外美術館ということで、何よりも美術館の雰囲気をしっかりと感じながら撮影することを目標にしました。
それでは、写真とともにご案内いたします!
京都府立陶板名画の庭とは
京都府立陶板名画の庭とは、安藤忠雄氏によって設計された絵画庭園です。実は、私はここがとても気に入っていまして、かれこれ3回目くらいの訪問になります。最初見たとき、コンクリートの打ち放しの建物なので、安藤忠雄さんの建物らしいと思いました。
こちらは壁面に水が滝のように流れているところがあり、完全に外の騒音をシャットアウトする造りになっているため、不思議なくらい静かな空間です。しかも、入園料が100円という驚き価格です。
世界的な名画の美しさを忠実に再現して、展示してあります。
作品は8点。
・「睡蓮・朝」(クロード・モネ)
・「鳥獣人物戯画」(鳥羽僧正)
・「最後の審判」(ミケランジェロ)
・「最後の晩餐」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
・「清明上河図」(張澤端)
・「ラ・グランド・ジャット島の日曜日の午後」(スーラ)
・「テラスにて」(ルノアール)
・「糸杉と星の道」(ゴッホ)
陶板画とは
陶板名画と聞くと、徳島県の大塚国際美術館の絵画を思い出される方もいらっしゃるかもしれません。前にテレビで陶板名画が約1000点以上も所蔵されていることが紹介されているのを見て、いつか訪れてみたいと思っています。
実は大塚国際美術館も京都府立陶板名画の庭の陶板名画もともに、大塚オーミ陶業株式会社の技術によってつくられました。
しかも以下のような過程を通して、つくられるそうで、気の遠くなるような作業です。
・著作権者の承諾を得る
・実際に現地へ赴き、原画を細かくチェックする(写真に撮る)
・撮った写真を参考に、転写シートに転写する
・転写シートを陶板の上にのせて、焼成する
・原画を持っていた方に検品してもらう
陶板画と写真には共通点がある
ところで、陶板とは成形してできた大きな板の上に、名画の色を転写して焼成したもの。こちらから帰ってきてから、いろいろと調べて知ったのですが、この技術は写真のメカニズムを活用して生まれたもののようです。
考えてみれば、キャンパスや画用紙に描いた絵画は年数が経過すると色あせてしまい、修復が必要になると思うのですが、陶板画はその必要がないのがすごいところ。写真の技術が色あせない絵画をつくったというところが、何よりも魅力的ですよね。あぁ、素晴らしい!
この陶板名画の庭の作品も、そのような造りの作品。レプリカと言ってしまえばそれまでですが、名画をそうした手法で残すというのも立派なアートだと思います。
今回の撮影でこだわったこと:色味と構図
この日の天気は曇り。今にも雨がぱらついてもおかしくないような状態でした。少しでも明るさが欲しいなと思ったので、色味を明るめにして撮影しました。試しに、露出補正で暗い方(-1)に調整してみたのですが、なんだかどんよりとした写真になったので、やめました。
あとは構図にこだわってみました。構図を意識することで、画像に立体感が生まれると思うので、意図的に使用したのは以下の構図。
・三分割構図(縦横を3等分した交点に被写体を配置)
・対角線構図(対角線上に被写体を配置)
・放射線構図(写真の奥の一点から四方八方に線が伸びているように見える構図)
・額縁構図(被写体を囲む構図)
それぞれの構図のメリットは以下の通りです。
三分割構図は展示してある絵画を少しおしゃれに映したく、絵画を横にずらして撮影しました。
さらに、巻物のような絵画があったので、対角線構図や放射線構図を意図的に使って奥行きを出すようにしました。画面が大きくダイナミックな映りになるように工夫することが大切!
名画たちをご紹介
順に名画を撮影した写真をご紹介します!
「鳥獣人物戯画」(鳥羽僧正)
安藤忠雄さんのコンクリート設計と古い時代の絵巻物が過去と現代をつないでいて、とても不思議に思えました。ちなみに、この作品は本物の鳥獣戯画の2倍の大きさ。
京都の世界遺産に認定されている高山寺に収められています。「なぜ描かれたのか」ということがいまだに解明されていないのがミステリアスですね。漫画のルーツともいわれている鳥獣戯画。
見ていても、意味が分かるようでわかりませんでした(汗)
「最後の審判」(ミケランジェロ)
一枚目は建物の柱と冗談の仕切りを額縁に見立てて、額縁構図を活用してみました。
この世界的名画を「これでもかー!!」と強調したかったからです。
もう圧巻としか言いようがありませんでした。1430㎝×1309㎝のほぼ原寸大の大きさ。
これだけの大作を一人で手掛けた巨匠はどれほどの才能に溢れた人だったのでしょうか!?ローマのバチカン博物館に行ったときに、実物を見たことがあるのですが、それに負けない迫力だと思いました。
水の流れが音を消してくれます。街の中にある癒しの空間ですね。
「最後の晩餐」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
原画はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院に所蔵。レオナルド・ダ・ヴィンチの作品のなかでも、「最後の晩餐」は珍しく完成している作品。何を伝えたかったのか、作品のエネルギーを感じます。
一枚目は対角線構図と三分割構図、二枚目は対角線構図です。こうして対角線上に配置することによって、こちらの建物の開放感を表せると思いました。
ゆったりとして展示してあり、絵画の下には水が流れています。この水の音が外の騒音を消してくれるんですよね。忙しく過ごしている方にはリフレッシュできるようなおすすめのスポットですよ!
「清明上河図」(張澤端)
台湾の故宮博物館に所蔵されている作品。こちらも鳥獣戯画と同じように、実物の2倍の大きさ。繊細ですが、大作ですね。
ちなみに、こちらは放射線構図を活用。
「ラ・グランド・ジャット島の日曜日の午後」(スーラ)
個人的にはこの作品が最も好きです。19世紀のパリのセーヌ河のほとりでくつろぐ人々を描いた作品ですが、当時はこのような田園地帯だったのですね。当時の様子を今に伝えるという意味では、絵画も写真も同じ役割を果たすもの。
原画は点描画で描かれた作品でしたが、よく点を打ち続けて、これほど大きな作品を仕上げるものだと感心します。これこそ、実物が見てみたい!下の「テラスにて」とともに、シカゴ美術館に所蔵されているそうで、いつか行ってみたいです。
「テラスにて」(ルノアール)
印象派の巨匠ルノアールの作品。ルノアールの描く人物は優しい雰囲気の作品が多く、温かい空気感を感じます。
作品数が少ないので疲れない
こちらの建物の最大のメリットは展示作品が非常に少ないので、疲れないということ!
写真や絵画好きな方はもちろん、それらに全く興味がない方でも、十分に楽しめるスポットです。
撮影場所
京都府立陶板名画の庭です。
〒606-0823
京都市左京区下鴨半木町(京都府立植物園北山門出口東隣)
アクセス
市営地下鉄烏丸線北山駅3番出口 徒歩1分
開園時間 9:00~17:00(入園は16:30まで)
休園日 12月28日~1月4日
入園料 一般100円、中学生以下・70歳以上は無料
まとめ
京都の観光名所に比べて、とても静かなスポット「京都府立陶板名画の庭」。
今回は曇りの日でしたが、次回は晴れた日に光をうまく取り入れて撮影してみたいです。
・陶板名画は写真のメカニズムからヒントを得ている。
・京都府立陶板名画の庭では構図を存分に生かせるデザインになっている。
(巻物のような作品が二つもあったので、放射線構図や対角線構図を実践。)
・街にありながら街の喧騒から離れて、名画を楽しめる。
カメラ好き・美術好きの方はもちろんのこと、京都にご旅行に行かれるときにはリストに入れていただきたいスポットです。